第六章
――こんな光景は初めて見る。
タブーは眠ったまま、クレイジーの手によって円柱の筒の中にそのまま入れられ、幾つかのコードに繋がれた。
緑色の液体に頭の先まで浸かり、それでも尚眠る様をルーティは見上げて。
「パーフルオロカーボン」
クレイジーはぽつりと口を開いて。
「えっ」
「そんなことも知らないの? リーダーの癖して、無知が過ぎるんじゃない?」
クレイジーの言葉が嫌に刺さる。
「……水の中でも呼吸が出来るようになる液体だよ。そいつと、魔力、人間に必要不可欠な栄養素を練り合わせた水だ」
ルーティは改めて、タブーを見上げる。
「定期的にそん中で眠らないと、ゼンマイが切れたように動かなくなってしまう」
最後、クレイジーは溜め息を吐き出して。
「どうしようもない“弟”だよ」
――そういえば、二人はマスターの手によって生み出された人間兵器なのだった。
そういう意味では最も兄弟のような関係で、クレイジーもそれとなく愛着が湧くということか。……多分、だけど。