第六章
「曲を耳にした者を強制的に催眠状態にし、悪夢を見せることによって弱体化した精神の操作を可能にするのがダークスコア」
マスターはキーボードから手を離すと、ゆっくりとルーティを振り返って。
「……お前達の目的は、そいつと対になる覚醒の唄。“ホーリィスコア”だな?」
ルーティは目を開いた。
――何もかも見透かされている。対となるその楽譜の名前こそ知らなかったが、彼らもそれなりに調べていたということか。
「欲しいのは情報か? それとも」
「後者よ」
すかさず、リムが答える。
「……実物か」
マスターはすっと目を逸らしてタブーを視界に捉えると、短く息を吐き出して。
「いいだろう」
それを聞いたクレイジーはいい加減諦めたのか、その場から離れると大きな円柱の筒の硝子に左手を添え、ユウを横目に、
「こっちに来な。まずは返してもらうよ」