第六章
黒煙の中から飛び出したのはルーティである。それも火柱が途切れた直後、全く同じ位置から現れるのだから不意討ちで。
「こいつ!」
バリアを解除し、太刀打ちしようとすかさず回し蹴りを仕掛けるも、ルーティはひらりと躱してクレイジーの背後へ。
「ちっ」
左目の瞳が、赤黒く瞬いた。
「そこまでだ」
不意にマスターの声が通路に響いて。
しかし、本人は見当たらない。ルーティは背後を取ったつもりであったが、クレイジーを見つめてぎょっとした。
赤い電気のようなものが体を這い、殺気を放っている。瞳はすぐに元の色に戻り、クレイジーは監視カメラを見上げて。
「兄さん! 見てたの?」
気付かなかった。
しかし、マスター自身は此方の存在に気付いてずっと見張っていたらしい。