第六章



目の前で先端を向けたまま空中に留まったそれを、ユウは跳ね返す訳でもなく、ぽとりと床に落として瞳を紫色へ。

「へえ」

クレイジー、はっと笑って。

「戦うに値しないってわけぇ?」

ユウ、答えず。

「っ……返してもらうよ!」

冷たい瞳でただ見据えるだけのユウの態度に苛立ったのか、駆け出すクレイジー。

すかさず、ネロが前に出る。

「おっと」

ネロはぱちんっと指を鳴らして。

「わりぃな」

目の前に出来上がった炎の玉が、小爆発を起こした。黒煙が辺りを覆い、クレイジーは咳き込みながらも後退。

直後、巨大な火柱がクレイジー目掛け飛んできて。クレイジー、すかさず左手を翳してはバリアを作り出し、攻撃を防いで。

「やり過ぎよ、ネロ!」
「いくらでも放てるってのは最高だな」

不意に火柱による攻撃は途切れて。

「なぁ?――ルーティ」
 
 
8/54ページ
スキ