第六章



「……もう一つだけ、いいかな」

ルーティはちらりと尻目でリオンの姿を捉え、やや遠慮がちに訊ねる。

「答えたくなかったらいいんだけど……どうやって、悪夢の中から抜け出せたの?」

今度こそ、リオンは口を閉ざしてしまった。ルーティははっと青ざめて振り返り、

「だっだから無理して答えなくても」
「いや、そういうわけじゃない」

リオンは意外にもきょとんとしていて。

「これに関してはさっきも言ったからな」


――私には悪夢なんかより、ユウからの仕置きの方が刺激が強くて飽きないのだよ。


リオンの台詞が脳内で再生される。

「……過去の後悔も、未来への不安も。全部受け止めて今があるんだ。塞ぎ込む必要はない。皆がいる。――そうだろう?」

リオンは微笑を浮かべて。
 
 
5/54ページ
スキ