第六章
「決して、生易しいものではなかった」
ルーティは振り向かず、耳を傾けて。
「ダークスコアによって奏でられた音が、まずは耳から入り込み、脳を麻痺させ、意識を奪う。暗転した視界の中で見せられるのは、自分の一番見たくない――」
リオンは一旦、口を閉じて。
「……とにかくあれは、過去のトラウマや後悔、未来への恐怖や不安……そういった心の弱い部分に付け込んだ悪夢を見せるのだろう。私も、そうだった」
誰も、口出ししようとしなかった。
ルーティは推測する。――悪夢を見せられた人々は塞ぎ込み、殻の中に閉じ籠もる。
それでも尚逃れられない悪夢に身を捩り、苦しんでいるのだ。それが、人間の犯してきた罪に値する処罰だって?
許せない。ルーティは歩きながら、悔しさのあまりぐっと拳を強く握っていた。