第五章
「っ切りがねえ」
ルーティの傍まで後退してきたネロは、殴られたのか頬はほんのり赤く腫れ、口端からは少量の血が垂れている。
ユウも何度か超能力を使ったお陰か、額に滲んだ汗を手の甲で拭って。リムもルーティの傍で両膝に手を付き、一息。
「時間稼ぎね。多分」
リムはぱんぱんと手を叩いて背を伸ばすと、髪を掻き上げて。――ベンゼルも、もう一方の楽譜について知っている。
彼だって今度は確実に、己の目的を果たしたいはず。その為の手回しだろう。
「タブー、頼める?」
例の翼を出すには少しだけ時間がかかる。
ルーティはタブーを横目にそう頼みつつ、構えた。リンクの両隣には既に体勢の整ったゲムヲとロボットが静かに並ぶ。
――時間を稼ごう。
「いいのかぁ? それって」
するとリンク、意味深に笑って。
「傷付くのはあんたの仲間だぜぇ……?」