第五章
「どう、かしらね」
リムは試しに本の表紙を開いてみた。
――生き物は皆、歌を歌う。
海のさざ波も、小鳥の囀りも。幾つかの音が重なって、世界は歌に溢れている。
『魂の調べ』。
その昔、一人の物好きな悪魔がいた。
何よりも心から音楽を愛し、魔界という暗闇に縛られず、放浪する変わり者だった。
だけれど彼は悪魔。放浪する変わり者。
ありとあらゆる生き物の魂を利用し、好きな音楽に捧げた。完成したその黒い楽譜は恐ろしい戦慄を奏で、それは後に――
「“ダークスコア”と名付けられた……」
リムは思わず口に出すと、ルーティと顔を見合せた。――この悪魔が、ベンゼル。
彼が悪魔だというのなら、どれだけ変わり者だったとして、こんな狂ったことをするのかも幾分か納得がいく。
問題はそいつをどうやって、現代まで封じ込めていたのか。ルーティは息を呑んだ。