第四章
「馬鹿、何で出てきたんだよ……」
ルーティの後ろからピチカが出てくると、スピカは心配そうな眼差しを送って。
するとピチカはそっとスピカの手を取り、自分の頬に添えた。スピカも思わず目を丸くしていたが、黙って見守って。
「にぃには……一人じゃないよ」
ピチカは瞼を閉じ、口を開く。
「たったの四年しか過ごしていない僕より、十年間一緒だったダークシャドウの方が最も家族に近くて、大切かもしれない」
スピカは小さく口を開いて、閉じた。
――そんなことはないと否定するつもりが、言葉を呑んでしまった。そうだったのかもしれない……そう思うと酷く胸が痛む。
「でもね」
ピチカはうっすらと瞼を開いて。
「僕にとってのにぃには……雨の日も、雪の日も、ずっと変わらず僕のお兄ちゃんで……大切な家族だったんだよ」