第四章
「何故、攻撃をしなかったんだ」
口を開いたのはフォックスである。
確かに、此方には戦士として自覚しろだの戦えだの言っておきながら、ユウやリオンはダークシャドウと交戦していない。
言う側がこうでは説得力も薄れる。ルーティは黙り込むユウを見つめて。
「しなかったのではなく、してはいけないと判断した。同士討ちは避けたい」
代わりにリオンが答えると、ウルフの狼耳がぴくんと震えた。ゆらりと尻尾が揺れたかと思えば、小さく舌打ちをして。
「考えたな」
次に察したフォックスが顔を顰め、ぐっと拳を握ると震わせて。やり場のない怒りを、壁を殴り付けることで抑え込む。
「くそっ!」
「フォックス!?」
ルーティはフォックスの元へ慌てて駆け寄り、何がどうしたのだと不安げな瞳で訴える。フォックスは壁に両手を付き。
「……ベンゼルという男」
ぽつりと呟き、俯いて。
「奴がダークシャドウに提供した肉体はっ! X部隊のメンバーということだ……!」