第三章
ピチカはぽろぽろと零れ落ちる涙を手の甲で拭うと、トゥーンに背中を向け、お化け屋敷を抜けるべく全力で駆け出した。
トゥーンはそんなピチカの背中を見送ると、覚悟を決めたように瞼を閉じて。
――ディディー。約束、守れなかった。
ピチカを連れて逃げるなんてそんな重たい使命、俺には無理だった。それだけの力は無くて、俺はまだまだ子供だったんだ。
「ごめ」
うっすらと瞼を開いたトゥーン。台詞を遮るように胸へ向けられた剣は深く突き刺さり、はっと目を見開いたが刹那。
目の前の視界が、ぐらりと歪んだ。
――何処まで逃げればいいんだろう。
ディディーも、ネスも、リュカも……最後まで一緒にいてくれたトゥーンでさえ、捕まってしまった。こんな状況下で。
僕一人が逃げ切れるはず、ないんだ。