第三章
「ピチカ! お前、一人で逃げろ!」
トゥーンは声を上げて。
――この先、本当に彼女が逃げ切れるかは分からない。それでも、トゥーンは自分が殺される瞬間を見られたくはなかった。
「っ……やだ!」
ピチカは目尻に涙を浮かべて。
「馬鹿! 早く逃げろって!」
「やだやだ! 僕一人じゃ無理だよ! 皆を置いて逃げるなんて出来ない!」
事情を知らないピチカは首を横に振り、駄々をこねて。その間にもマルスは迫り、トゥーンの頬を冷や汗が伝い。
自分が殺されれば、次のターゲットがピチカなのは明白。それだけはさせたくない。
「いいから逃げろ!」
「嫌っ」
「ピチカ!」
ピチカが耳を塞ごうとしたところで、トゥーンは語気を強めて名を呼び。
トゥーンは先程よりも大きな声で。
「逃げろぉおおお!」