第三章
「リュカ……」
鉄格子の外へ伸ばされたリュカの手に己の手を重ね、ぽつりと名を呼ぶ。
すっと手を取り、手の甲に口付ける。
「ぁ……」
小さく声を洩らし、怯えきった瞳を見開くリュカ。ネスはにやりと口角を吊り上げると、ぐいと顔を寄せると。
「死んじゃえよ。バーカ」
ぱっと手を離し、ゆっくり後退。
直後、唸り声が聞こえてリュカは振り向き、もうすぐそこまでやって来ていた究極キマイラを視界に捉えて。
何とか抵抗せねば。そう思ったのも束の間、究極キマイラは恐ろしいほどのスピードでリュカに飛びかかり、床に押し倒して。
「やっ……だ、やだ……っ!」
両腕を前足でしっかりと押さえ付けられ、鋭く尖った牙が柔らかな肌へ向けられる。
「や、あ……あぁあ……っ!」
光によって壁に映し出された影が、リュカに襲いかかる究極キマイラを映し出す。
飛び散る鮮血、響き渡る悲鳴。
しかし、誰も救いの手を差し伸べる者はおらず、静かな笑い声が木霊していた――