第三章
「究極……キマイラ……」
ぽつりぽつりとその名を口にする。
それはまだX部隊に入るよりほんの少し前のこと。成り行きでとある研究所へ出向いたわけだが、そこで脱走していた厄介なキマイラが、今ここにいる獣というわけだ。
「さあ」
ネスは微笑を浮かべると。
「――おはようの時間だよ」
ぱちんっと指を鳴らす。
ゆっくりと瞼を開き、金色の殺気立った瞳をリュカに向ける究極キマイラ。
「っ……、ぁ……」
究極キマイラがのっそりと四足で立ち上がると同時に、リュカは鉄格子に背中をぶつけて。ガクガクと体は震え、足が竦む。
「や、あ……っネス……!」
何とか鉄格子を掴み、未だ檻の前に立っているネスに手を伸ばして。早くもぽろぽろと涙を溢しながら、助けを乞う。