第三章



突然駆け出してきたのだ。

ああして瞳の色が変わった時点で捕まったら何をされるか分からない。リュカはもう一歩後退すると背中を向け、逃げ出して。

「逃がさへん……あんたも……捕まる」

リュカをしっかりと追いかけながら、不気味に独り言を口にするディディー。

辺りにはメリーゴーランドにコーヒーカップ。それが誰も乗っていないのに動き出して、不気味さを醸し出している。

リュカはまず、地面を蹴って飛び上がり、コーヒーカップの上に飛び乗ると、そこから反動を付けてメリーゴーランドの屋根の上へ。ディディーが同じように追いかけてきているのを確認すると、近くを緩やかに走っていた線路の上に乗り移って。

「君……」

ぴたり、とディディーは何故か追いかけるのをやめて立ち止まる。それを見たリュカが、ほっと息を吐き出したのも束の間。


ガタン、ゴトン


何かがゆっくりとこの線路を登ってくる。

リュカは音がする方向を恐る恐る振り返ると、顔を上げては目を凝らし、ある物体を視界に捉えた。――それは。
 
 
40/59ページ
スキ