第三章
「ディディー!」
――助かったんだ!
リュカは嬉しくなって、ぱあっと表情を明るくすると駆け寄ろうとした。しかし、すぐに思い止まり、何故か後退する。
「……どうしたんだよ」
ディディーは相変わらず微笑を浮かべたまま、不思議そうに小首を傾げる。
リュカ、ゆっくりと首を横に振って。
「っ……駄目……違、う……」
自分に言い聞かせるように呟く。
――リュカはあの時、ディディーの話したことが確かなら、こう考えなくてはならないと心の中で密かに決めていた。
それは。
「ディディーじゃ、ないっ……!」
一度姿を見失った人物は信じないこと。
つまり、悪夢を魅せられダークシャドウに体を乗っ取られたと想定することにしたのだ。すると、ディディーは笑って。
「……うん」
瞳に赤い光がぼんやりと灯り。
「賢い人は好かん、かな」