第三章



やがてリュカの背中が見えなくなると、ネスは短く息を吐き出して。――その時。

「くくっ」

ガシッ、とネスの右足は掴まれて。

「捕まえた」

頭から流れ出す鮮血が、赤い光を灯した冷たい瞳が、ニヤリと笑うリンクのその表情をより一層不気味に見せている。

今現在ネスの右足を掴んでいるその手を振り払う間もなく、ネスの足下には銀色の魔法陣が現れて。視界は黒い煙に遮られた。


――立ち向かえる勇気。

自分にはそれが無いのだと、リュカは幾度となく悔やんだ。確かに、あのタブーとの戦いの中では上手く立ち回れたのかもしれない。……だが、それだけだ。

本当に大切な時にしか発揮できない力など、意味はあるのだろうか。きっと他の場面で自分は足手まといでしかなくて。

存在意義さえ、疑ってしまう。
 
 
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