第三章
「非現実的、かぁ……」
と、今まで黙っていたピチカが口を開き。
「ね、この世界がもし、存在しない偽りの世界……だとしたら?」
ピチカは言葉を続けて。
「この遊園地も、今ディディーがいる場所も全てベンゼルって人が用意した演劇の舞台だと思うの」
「演劇?……そういや、罰ゲームがどうとかって言ってたな」
トゥーンが口を挟む。
「じゃあ何か? 今俺達が見ている全ては現実じゃない、夢か幻ってこ」
「いや、それはねえよ」
ディディーが遮る。
「高い所から飛び下りた時の衝撃。走った後の疲労。銃撃の反動。……この世界が嘘なら、これは必要な感覚か?」
「痛みを感じる夢だってあるだろ」
トゥーンが言い返す。
――ディディーは知っていた。いや、教えられたのだ。ベンゼルという男が、ダークスコアに記されたメロディを奏でることで、悪夢を魅せていることを。……もし。
彼と出会ったあの時、何処からともなく聞こえていたメロディがそうだとしたら。