第三章
「なっ」
ディディーは目を見開いた。
……いつの間にかディディーの足元には銀色の魔法陣が描かれ、そこから強風が発生し、吹き抜けてきているのだ。かと思えば魔方陣の線から黒い煙が漏れ出して。
逃げようと後退を始めるも遅く、魔法陣から突如生えてきた白い手にディディーの左足は掴まれて。続いて、右足も。
「っ何だよ、これ……やめ、や、ぁ」
そうこうしている間に右腕、左腕も白い手に掴まれて、徐々に魔法陣の中へ引きずり込まれていき。ディディーは何とか逃れようともがくいてみるも、力及ばず。
「まずは一人目だねぇ」
「ふざけっ……あ、待っ、くぅ……!」
マルスはにやりと妖しく笑って。
「ぐっちゃぐちゃのみっともない姿になっちゃえ」
――間もなく、魔法陣諸共ディディーは消え失せ、辺りには妙な静寂が訪れた。