第一章
「何騒いでんだよ」
そこへ現れたのはスピカ。ダークウルフも付いて来ていて、どうやら二人はちょうど共同任務から帰ってきたところらしい。
気付いたダークトゥーンは、何も言わずにスピカに抱き付いて。背の低い彼は、すりすりとスピカの胸元に擦り寄り。
「うおっ……ちょ、どうしたんだ?」
スピカの中でもダークトゥーンは弟のような存在で、こういった行動も決して嫌ではなく、ただ疑問符を浮かべて。
「……フォックスが」
ぽつりと呟き、ダークトゥーンは顔を上げると切なくなるような瞳で見上げながら、
「俺の大切なもの、取ろうとしたから」
そう告げて、ダークフォックスを振り返る。言いがかりだ、とすぐさまダークフォックスは首を勢いよく横に振って。
この後、勘違いしたスピカがダークフォックスを攻撃……なんてパターンだと思われがちだが、何せこれは日常茶飯事なのだ。
スピカだって真実を見抜いている。