第三章
「……冗談キツいぞ、リュカ」
誰もいなかった。
ネスは大きく息を吐き出すと、苦笑混じりにリュカを小突いて。しかし、リュカは本気なのか酷く慌てた様子で。
「本当だよ! 本当に見たんだ!」
「自分を、だろ? よせって」
全く取り合おうとしないネスに、リュカは不安を募らせ、目尻に涙を浮かべて。
「だから……っ」
「鏡で作られた迷路、だよな?」
無線からトゥーンの声がして。
「そうだけど」
「鏡はさ、鏡の中の人も映すんだよ。小さけりゃ遠く、多きけりゃ近い。……リュカ。お前が見た人影は、どうだったんだ?」
リュカは顔を上げて。
「……大きかった、気がする……」
こつん
靴音。ネスは今一度リュカの手を握り締めると、警戒して辺りを見回して。