プロローグ
◆プロローグ
かつて、放浪の悪魔ベンゼルは音楽を誰よりも愛していた。肉を切り裂く音よりも、恐怖に戦く人間の悲鳴よりも。
ベンゼルは楽譜を書いた。
あらゆる生き物の霊魂を奪い、音符として五線譜に並べた。……するとどうだろう。
楽譜はたちまち黒く染まり、試しに音楽を奏でると聴いた者に悪夢を見せたのだ。
ベンゼルは楽譜に魅いられてしまった。
楽譜に記された通りに音楽を奏でては悪夢を見せて、霊魂を吸い取り、綴る。
そうして繰り返すことで楽譜は徐々に強い魔力を秘めていった。
しかし、彼は曲を完成させる前に、強い魔力を秘めたが故に意思を持った楽譜に己の霊魂を吸い取られてしまったらしい。
後に残ったその楽譜は、ベンゼルの仲間内の悪魔に“ダークスコア”と恐れられた。
未完成の悪魔の楽譜。最後まで奏でれば、世界を破滅に追い込むことが出来る。
しかし。
その後の楽譜の行方は、誰も知らない――
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