困った時の?



いい? とクレイジーは人差し指を立てて。

「あんた達と同じで、物にも歴史という『設定』がある。特にこの世界に一つしか存在しないマスターソードやファルシオンといったものはこことは別の分岐世界で一つの歴史を刻んだ伝説としてまた新たな物語を刻む軸になったりするんだ」

リンクとマルスは並んで正座して静聴。

「例えば、ファルシオンはルキナが受け継いでいるだろう。あれはマルス、お前が自身の物語の中で世界を救済し、完結させたからこそあの女の手に渡っている……いわゆるバトンのようなものと考えていい」

マスターはすっと冷たく視線を下して。

「次の物語を綴るバトンの役目を果たすそれを。壊したらどうなると思う?」

……まさか。

「未来あるはずの物語と」
「刻んできた歴史が消失する」


ちょっと待てええぇえ!? 


「ただのうっかりじゃ済まされない問題だよ?」

呆れたように、クレイジー。

「直せと頼み込まれたところで玩具を修理するのとは訳が違う」
「具体的には一から創り出して元あった歴史を刻ませる必要があるんだ」
「そ、そんなこと……」

不安そうに呟くマルスを目にマスターはにやりと笑み。

「神に不可能があっては名が廃るだろう?」

クレイジーは屈み込んで。

「とりあえずこいつらは駄目だね。関わった歴史も含めて壊しとくよ」
「それが終わったら俺が歴史を再構築しよう」
「……お任せしていいんですか」
「信用ないなぁ。そもそも僕たちにしか出来ないっしょ」

そう言うや否やそれぞれの隻眼にぼんやりと深い光が灯り。

「その代わり高くつくから」
「覚悟しておくんだな。貧乏人」
 
 
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