困った時の?
穏やかに見えて敵対意識の強いあの勇者様が。
事もあろうに最大の敵に……頼み事?
「此方です」
そう簡単に信用するつもりもないが全く気にならないというはずもなく。こそこそ人目を盗むようにしながら行き着いた先は倉庫だった。
軋んで開かれた扉の先は真っ暗であの先に罠が仕掛けられているとも限らない――であれば背中を蹴り出してでも部屋に放り込みそうなものだが、肝心のリンクは人目を気にするばかりでそれをしようとしない。
マスターとクレイジーは互いの視線を交えると部屋に足を踏み入れた。それを確認しても尚最後まで落ち着かない様子のまま、リンクは後ろ手で静かに扉を閉めて、鍵をかける。
「で。こんなところに連れ込んでまで何をしようって?」
「別に何もしませんよ」
溜め息をひとつ。
「今回は頭を下げる身ですから」
訝しげな視線を浴びながらリンクは物陰に向かって声をかけた。
「もう出てきてもいいですよ」
そうして合図を受けて現れたのは。
「……マルス」
王子と勇者が肩を並べて二柱の神と向き合う。
幾度となく別々の方向から世界を救ってきた戦士たちが。
「お願いします!」