困った時の?
口を挟んだのはルキナだった。
「英雄王……マルス様から窺いました。このティアラの他にもそうして再構築したものがたくさんあると」
「誰かと思えば俺たちを受け渡したのはあいつか」
マスターは小さく息をついた。
「そうまでして拘らなければならない理由は何なのですか!」
思わず激昂するルキナをロックマンが宥めようと口を開いた、その時。
「っ、」
はたと。
「……何のつもりだ」
紫の光が薄れて消える。
弱い魔力により神力の施しを跳ね除けたのはルフレだった。
「必要はないと思ったから」
そう答えて、ルフレは手を翳した。程なく手のひらの上に魔方陣が浮かび上がったかと思うとその中心からあちらこちらの破けた魔道書がひとつ。やがて、魔方陣が消え失せると魔道書はルフレの手の中へ。
「これ。私が使っていた中で一番古い魔道書なの。壊れたらどうなると思う?」
突拍子もない質問だな。
「壊れたらそこまでに決まっているだろう」
マスターは半ば呆れたように答えた。
「……そうね。そうかもしれない」
ルフレは魔道書を見つめて。
「けれど壊れたその先で新しく綴っていくものもあるのよ」