困った時の?
「ありがとうございます」
次の瞬間ルキナが告げた言葉に。
マスターもクレイジーも暫し呆気にとられた。
「このティアラは、私が十の誕生日を迎えた時にお母様の手で直接飾られたもの」
ルキナは腰に下げたファルシオンの柄にそっと触れて。
「お父様から受け継いだこの剣と同じ。私にとってはこの世に二つとない、大切な宝物だったんです」
丸椅子に腰掛けていたロックマンは口を開く。
「何故こんなことを?」
マスターは口を閉ざしている。
「勝手と言えばそうかもしれない。だが、拘る理由が欲しい」
目を細めた。
「……関係ないと言ったところで追及をやめるつもりはないのだろうな」
マスターが言うとロックマンはにっこりと笑った。本来であれば毒を並べて嘲り散々にからかったところで神力を使い、脱するところだが困ったことに神力が底を突いている。それでも使えないことはないがそれはまた意識を飛ばしてしまう結果となるだろうし煽った後でそんな無防備な姿を晒すのでは赤恥というものだ。
どうするのとでも言いたげなクレイジーの頭をひと撫でして。静かに視線を上げたその直後に扉を叩く音。「入れ」とロックマンが応えた。
「失礼します」