困った時の?
今度は何なんだ。脚を崩して座り込んだその人の手に握られていたのは。
「ティアラが……」
藍色の髪に映える金の髪飾り。彼女が常日頃付けていたそれがあろうことか彼女の手の中でぽっきりと真ん中から折れてしまっていたのだ。
ルキナは未来からやってきたイーリス聖王国の王女。絶望の未来と言われたそこで肌身離さず身につけていたティアラがどれほど大切なものだったのか。戦時中いつ壊れてもおかしくなかったのに今の今まで傷ひとつ無かったのは彼女にとって本来守りたかった未来の世界の形見そのものだったからなのだろう。
「……!」
ルキナが顔を上げると直ぐそこにマスターとクレイジーが立っていた。慌てて剣を取ろうとしたがそれより早くマスターはその場に跪くとルキナの手を取って。
……その手から。ティアラを。
瞳に灯をともして織り成す再構築の儀式。赤と青の仄かな優しい光に見惚れて。
いくら困った時の神頼みだからってお人好しはどうかと思うよ。
でもさ。
たまには悪くないよね。
こうして誰かに頼られるのも。
「マスター、クレイジー、」
瞼がふっと重くなる。
「えっ」
その場に崩れ落ちる二人にルキナは思わず叫んだ。
「マスター! クレイジー!」