困った時の?
……くだらない。
「いつまで続けるつもりだよ」
クレイジーは裏庭に向かって歩いていく兄の背中に嘆いた。
「気付いてるんだろ?」
その人はぴたっと足を止めると振り返った。
神力の仕組みについて話した途端、勇者の目の色が変わった。自分たちにはどうしようもない事項を頼っているふりして不意を討とうって魂胆が丸見え。
そんな悪巧みに気付かない僕たちじゃない。
「……何の話だ?」
えっ。
「まさか兄さん気付いてなかったの?」
「話なら後で聞いてやる」
ほら行くぞ、と先を歩く兄はふらりふらりと覚束ない足取り。
駄目だ。疲れすぎて普段回る頭も回らないみたいだ。
「待ってよ兄さん、置いていくなってば!」
慌てたクレイジーが後を追いかけて隣に並んだその時である。
がさがさと。
茂みが揺れたかと思うと人影がひとつ。
「……お前は」