乱立!ラブフラグ!
扉を抜けると何処か懐かしい匂いが二人を迎えた。
レトロな雰囲気を醸し出すこの映画館、ロックマンが話すにはデジタル化の波に攫われずもう何十年とフィルム映画に拘り上映してきたのだと。確かにこの映画館には若者より幾らか年老いた人の方が多いような気がする。それを不思議と、年寄り臭いなどとは思わない。何というか――
「落ち着くだろう」
ぴしゃり。言い当てられて無言。
「……まぁいいんじゃないの」
はてさて。フィルム映画となると見られるものも限られてくるわけだが――
「どんな映画を見るんだ?」
「そういうのはお楽しみだろう」
「えージャンルは?」
軋む扉を抜ければ巨大なスクリーンが出迎えた。チケットに記された番号に従って席に座ったものの、ロックマンはまあ見てみろとばかりにはぐらかして答えない。それならせめてヒントくらい、とも思ったが時間切れ。ブザー音。
座り直している間に照明はゆっくりと光を閉ざし、やがて上映が始まる。
……ホラー映画じゃないだろうな。まさか見れないというほどでもないがああいうのは結局のところ心臓に悪くて寿命が縮むような気さえする。
かといって終始ギャグのコメディ映画だったらどうしようかとも思う。別にそれも嫌いじゃないんだけど時々意味が分からなくて微妙な空気になることがあるし。
じゃあ、何だったら理想かってそりゃあ、せっかくのデートなんだから――