レッドさん落ち着いて!
……なんだこの匂い。食堂が近付くにつれてネロは顔を顰めた。
何かを作ってるんだろうがそれにしては様子が違う。甘ったるい匂いもそうだがつんとした匂いや締まるような酸っぱい匂い、とにかく色んな匂いが合わさってよく分からない匂いと化している。急がなければ無くなるような代物なのだろうか。
「連れてきたよ!」
ピットが食堂の扉を開け放った。
「……!」
目を丸くした。
「遅かったじゃないか!」
「先に食べちゃってるわよ」
ローナとシフォンが口々に。
食堂には妹たちだけでなく他のメンバーもいた。共通して食べていたのは。
「ポフィン……?」
思わず口に出して言ったポフィンとは木の実を使って作るお菓子のことである。様々な味の木の実を磨り潰し、掻き回して作られるそれは外の生地が歯を立てればほろっと崩れ、中身はふんわり中心はとろっと。
兎にも角にもポケモン達の間では大好評の人気スイーツなのだ。
「おにぃってば甘いのばっかり!」
振り返る。
「ピチカこそ、さっきから甘いポフィンしか食べてないでしょ」
「だって美味しいんだもーん!」
頬っぺたが落ちそうとでも言ったところか。紅く色付いた頬に手を当てて笑う様は口にするまでもなく幸せそうである。