レッドさん落ち着いて!
「ご苦労さま」
にこりとレッドがお出迎え。くそっ、普段誰の入浴時間とも被らない遅い時間帯に入るものだからすっかり油断していた。お湯は温かいが水は水だ、炎タイプのポケモンとして揺蕩う水面を眺めてるだけでも命の危機を感じるし真に受け入れ難い。
大体、風呂なんて二日か三日に一遍入れりゃいいじゃねえか。自分が深く身嗜みに拘らない性分だからこそ言えた言葉だろうが入らなきゃ死ぬってわけでもないんだし一日に二度三度なんざ大袈裟だ。水とガスを同時に節約出来る俺の考えの方が絶対経済的にも優しいっての。
「ほら、さっさと脱いだ脱いだ!」
「わぁったよ」
服の裾を引くローナの手を払ってネロは溜め息。この頃になると浴場に連れ込まれた時点で大方諦めがつくのだ。騒いだって体は勝手に綺麗になりゃしないし。
「あら。随分と素直に脱ぐのね」
「抵抗したら酷いからな」
ちなみに前回はシフォンのはっぱカッターにより強制的に脱がされた。脱がされたというより器用に切り刻まれて着ていた服が使い物にならなくなっただけだが。
ふざけんな。芸人じゃないんだから――
「そんじゃ僕たちは行こっか!」
……え?
「風呂は?」
「私たちは後から入るわよ」
「何だい何だい、そんなに妹の裸が見たいのかい?」
そういうことじゃなくて。
妹たちが離脱するということは。