インヴァースの輪舞曲
結局、屋敷の外まで見送りに来てしまった。
夕暮れ時──空はいつの間にか橙と紫のコントラストに彩られていて。カラスの親子が呑気に鳴いて山へ帰るのを遠く眺めながら。まるであの熱い戦いなど無かったかのように巡る世界に。
取るに足らない小さな出来事だと。
思い知らされながら。
「また来るんでしょうか」
トレーナーがぽつりと不安を呟いた。
「追い返せばいいだろ」
「強気ですね。一分も持たなかったのに」
にこやかな笑みを浮かべたパルテナに毒突かれたブラピは分かりやすく舌を打つ。
「お前もよく勝てたよな」
「ああ。あれ?」
ケンに言われてパックマンは答える。
「どんなプロだってそういうものなんだよ」
「? どういうことだ?」
「初見殺しというやつで御座るな」
ミカゲが頷く。
「そっ」
……結局のところ。
自分が隊長に勝てたのは運が良かっただけ。オンライン対戦の時と同じで情報も対策法も知らない連中が相手だったから技を入れやすく展開をモノにしやすかった。だからきっと同じ事があるなら次はこう上手くはいかない。……
「……あのさ。隊長」
集団から少し外れて先頭に立ち、次第に小さくなっていく三人の影を終始無言で眺めていたロックマンにパックマンは呼び掛ける。
「わざとだろ」
ロックマンはゆっくりと振り返った。
「ベクトル変更しなかったの」