インヴァースの輪舞曲
信じられない。信じられるはずもない。
類を見ない世界戦闘力の数値を叩き出した連戦連勝のあの化け物を。四十人超が順に掛かれど決して突破を許さなかった要塞を。各位の身体能力や戦闘面での立ち回り、専門的な知識までその頭に叩き込んで立ち塞がった天才を。
……本当に。
「や、」
誰かがぽつりと漏らしたのが引き金。
「やったああああ!」
お祭り騒ぎ。駆け寄ってきた隊員に抱きつかれたり頭を撫でられたり揉みくちゃにされながらパックマンはばつが悪そうな顔。そんな最中、当然のことながらもう一人が帰還を果たしてパネルから現れる──気配に気付いて振り返れば。
「……隊長」
何だか久しぶりに会った気がする。
さっきまで、戦っていたのに。
「……ふ」
心ここに在らずといった様子で黙りこくっているロックマンに歩み寄ったパックマンは腰に手を当てながら顔を覗き込んでにやりと笑み。
「パックマン勝っちゃったけど」
わざとらしく首を傾けて。
「どんな気持ち?」
全くもっていい性格をしている。
「……まさか本当に負けるとは思わなかった」
ロックマンは煽りにも構わず小さく呟く。
「負けたんだな。……本当に」
「……お前」
パックマンが何かを言いかけたその時である。
「ロック」
呼びかける声に。
集まっていた面々が端に避ければ。
「……博士」