インヴァースの輪舞曲
目前にまで迫った青白い光が思考を飲み込む。
……させるか!
真正面からエネルギー弾を受けたが最大出力とまではいかない火力だったことも相俟って敢えなく撃墜とまでは至らなかった──体を空中で大きく捻らせて吹っ飛びの距離や速度を軽減したまではいいが今度はあの戦場に戻らなければいけない。崖際に立って見詰めるあの化け物がどの選択肢を取って撃墜を狙うかこの短い間に冷静に判断する必要がある。
上。……リュウの時と同じように、砲口から打ち出した小型の竜巻で遥か上空へと運んでそのまま撃墜を狙う可能性があるからには選べない。
下はメテオを狙ってくる可能性がある。自分の復帰を助ける技が一方通行である以上は当たり前に安全は保証できない。
じゃあ横から?……冗談じゃない。
エネルギー弾の餌食になるのがオチだ。
「ちっ」
復帰の手段を完全に断たれた訳じゃない。遣り様はある──パックマンは腕を引いてブロックノイズを喚び出すと手のひらにドット状のオレンジを形成した。体を更に捻らせて戦場へと近付き待機しているロックマンと直線上に並んだ瞬間に勢いよく投げ付ける。それが決定打になるものとまで当然のこと望んでいない。パックマンは直線上から外れて少し下のちょうど互いに互いが視界から外れる位置まで落ちるとそこでようやく空中で前転しながら腕を払い己の真下に一線を引いて。実体化したそれをトランポリンのように足場にして高く高く──飛び上がれば。
再び奴の姿が見えた。それはあちらも同じ──投げ付けたオレンジを打ち消したのか躱したのか知らないが右腕は変形しているものの此方の追撃を狙っているような様子はない。
戦場に己の影が落ちるのを確認したがこのまま降り立つのは許されるはずもないだろう。パックマンは空中で両手を打つと手のひらに赤色のブロックノイズを発生させて前転の後真下へ放った。それはたちまち消火栓へと変化してロックマンは直撃を避けるべく後方へ──その細かな行動の一つ一つをパックマンも見逃さない。
ばちんと指を鳴らせばパックマンとロックマンの間に点々とベージュ色の光の玉が浮かんだ。次いでパックマンの体の至る所にノイズが走り姿形が歪んだかと思えば──黄色い球体に変化して。
「……!」
大きく口を開いて。
ベージュ色の光の玉を喰らいながら。
着実に、確実に。──目の前に。