インヴァースの輪舞曲
「、!」
形成したドット状の鍵を逆手に取って振り下ろしたが首を反らし躱された。それだけに留まらず鍵を持った手首を掴まれたかと思えば両脚で腹部を蹴り上げられて──そのまま宙に浮かせたパックマンを追うように体を起こしたロックマンはしゃがみ込んだ状態から勢いよく飛び上がり宙返りをしながら追い討ちの蹴り払い。
容赦なく地面に叩き付けられてそのままボールのように転々と跳ねたが崖から飛び出す前に体勢を整え靴裏を地面に擦りながら着地。息つく間もなく影が差して拳が連続して飛んでくるも、自棄にならずに冷静に。受けて流して切り返しに手持ちの鍵を投げ付けるが今度も首を反らし躱された。お返しとばかりに飛んできた回し蹴りを受けるべく両腕を構えたが今度はブラフと来た。気付いた時には遅く炎を纏った拳が躊躇なく防御を崩してその体を弾き飛ばす。
──ああもう! 化け物かよ!
揃いも揃って返り討ちに遭うわけだ。隙を窺う暇もなく技が飛んでくる上にそのどれもが恵まれた発生フレーム。此方の挙動一つ一つを取り零さず痛い所を突いていくセンス。
こんなの。……実戦だったら、殺されてる!
「っ、」
放たれたエネルギー弾を躱したがその弾を影にして迫ってきていた本人への反応が遅れて拳を受ける形となってしまう。直ぐ様脇に流したがそこで欲を出して追撃までは狙わずに退避を選択。パックマンは地面を軽く蹴って浮遊する台の上に着地すると右腕を打ち払い右手のひらにドット状の黄金色のベルを形成させた。
隊長には。一度出した技が通用しない。
今まで味方だったばかりに失念していたがまさかその能力がこうも壁として立ちはだかるものとは。もちろん全てが通じないという話ではないが大抵冷静に見切られる。むきになって当てようとすればするほど溝に嵌るというもの。
能ある鷹が爪を隠すように。
本命を。撃墜を狙うその瞬間まで隠さなければ仕留めきるのは厳しい。……だからといって!
「っ!」
考えている余裕だってない中技を繰り出せばそれだけ選択肢が狭まっていくというのにダメージをどうやって稼げって言うんだよ! くそ!
嘆いている暇もない──激しい打ち合いの末ベルを振り向き様に投げ付けたが回避と同時にそれを奪われた。ぎくりと目を開いた時には遅く投げ付けられたそれがヒットすれば全身に電気のようなものが駆け抜けて体の自由が奪われる。
たかが一瞬、されど一瞬。
そんな隙を晒したら。