インヴァースの輪舞曲
パックマンは目を細めた。その傍らでリドリーが口を開こうとするのを腕を差し出して。
「ロックが決めたことならって最初は思ってた」
でも。ロールは続ける。
「あんなに苦しそうな顔をして、戦い続けて……あんな姿、……もう見てられないよ……」
パックマンはモニターの画面を見遣った。今現在試合に励んでいるのはカズヤだがロックマンは変わらず終始無表情であり彼女の話しているような表情にはとても見えない。見えないというだけで画面越しでも兄妹のような仲であった彼女には他とは違う何かを感じ取ったのかもしれない。
「……そう」
パックマンはひと言返した。
程なくしてモニター画面が変化する。凡そ見飽きた表示の後に帰還したカズヤがパックマンの元へ歩み寄った。予測通りなのやら予知した通りなのやら遂にこの時は訪れてしまったのだ。
「パックマン負けてあげないよ」
そう言って歩き出す。
「当たり前だろ」
ロールは慌てたように顔を上げる。
「っ何が本当に正しくて、本当にロックのためになるのか──分かってるの!?」
投げかけられる嘆きにふと足は止まる。
「……分かってるよ」
パックマンはじろりと睨み付けて返す。
「少なくともお前たちよりは」
過ごした時間だって。
そりゃ勝らないかもしれないけどさ。
でも。だって。
ずっと一緒に戦ってきた仲間じゃん。
分かるよ。
バカ真面目なお前が考えてることくらい。
「、……」
決戦の時は来てしまった。手招くように青白い光を灯すパネルを前にパックマンはその一歩を踏み出すのを何となく躊躇って立ち尽くす。
瞼を閉じて深呼吸。
大丈夫、……、大丈夫。……
「……パックマン」