インヴァースの輪舞曲



緊張、しない筈がない。

あれだけ頼み込んでおいて自信があるはずも。何せ相手はあのロックマンである──ここまで無敗の頭の可笑しいヤツ。オレ達のことを想うのなら手を抜いてほしいものだったけどまさか完膚なきまでに叩きのめしてくるものとは思わなかった。彼らしいといえばそうだけど状況は見えているのだろうか。戦闘狂にも程がある。


分かってるのかよ。隊長。

この戦いでパックマン達が負けたら──


「あの」

突然声をかけられるものだから肩を跳ねた。

「ごっごめんなさい!」

そこに立っていたのはロールである。他の二人に並んでモニター画面を見つめていた筈である彼女がまさか自分から声を掛けてくるものとは思わずパックマンは訝しげに眉を寄せる。

「……何だよ」

正直言って良い印象はない。今度の件でそちら側である彼女に気を許すはずもなかった。

「あ……あのね」

ロールはまだ後ろの方でモニター画面に注目しているブルースとライト博士をちらりと見ると向き直るなり腰を曲げて深く頭を下げた。

「……お願いします」

意図の読めない行動に目を見張っていれば。

「ロックに」

少女はぽつりぽつりと。弱々しい声で。

「……勝たないで、ください……」
 
 
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