インヴァースの輪舞曲
この命。どうせ散るなら戦場が良い。
それが戦士としての誇りだから。
……でも。
「当たり前だろ」
散らせるわけにはいかない。
この戦いだけは。──絶対に!
「……兄さん」
いいの? とばかりにルフレが聞いた。
「僕も少し驚いたけど」
マークは微笑む。
「あんなに真剣な彼は初めて見たから」
リドリーが戦場に向かった後で立ち尽くしていたパックマンの側にカズヤが歩み寄ってきた。前述の通り技術──即ち知識や立ち回りの術を出来得る限り叩き込むつもりなのだろう。短い時間でどれだけ把握出来るものか分からない上に実践する時間すらないが、それでも。心の隅にでも留めているか否かでは話が変わってくる。
「単純かな」
ルフレは首を横に振る。
「いいえ。……私もよ」
信じることは容易くても。
それを背負う重みは比にならない。
勝負の時が近付く。
刻一刻と。
「貴様はめくりより先端当てを意識しろ」
「……分かった」
「差し込みは狙ってもいい」
これでも彼なりに集中しているのだ。終始眉間に皺を寄せているがその頭の中では繰り返しシミュレーションが行われている。自分の出番を迎えることなく誰かが勝利を捥ぎ取ってしまえばいつまでも居座り続けるこの動悸は容易く収まったことだろうがそう上手くいくはずもなく。
「カズヤ」
マークにひと声呼ばれればカズヤは自分の番だと察した様で。一瞥くれて離れるカズヤを見送れば入れ替わるようにしてリドリーが歩み寄る。
「落ち着いたかよ」
まさかそっちの質問が飛んでくるものだとは思わなかった。パックマンは乾いた笑みを零す。
「……まあまあかな」