インヴァースの輪舞曲
パックマン、と誰かが静かに呼んだ。
順番が回ってきたのだろう──けれどその本人は頭を上げない。今だって目の前の人だけじゃないこの場に居合わせた全員にどんな顔で睨まれているものかも分からない。元々、無駄にプライドが高くて誰かと特別仲が良い訳でも信用されている訳でもなかった自分がこの一回頭を下げただけで通してもらえるものとも思っていなかった。
それでも。
「……お願いします……」
勝てる見込みがあるのだとすれば。
「ギャラリーは黙ってな」
足音が横をすり抜けていく。
「カズヤ。黄色いのに技術を教えてやれ」
「……いいだろう」
パックマンは目を開く。
「リドリー」
「テメェが言ったことは今から出てくる連中は自分の出番までの時間稼ぎ程度にしかならねえってことだ。それが何を意味するか分かるな?」
ぎくりとして口を噤んだ。何もそこまで意図していたつもりはないがそれなら僅かに感じていた苛立ちの感情も多少なりとも納得がいく。
「必ず。結果を出せ」
リドリーはパネルへ足を進ませる。
「散らすなよ」