インヴァースの輪舞曲
打算はある──でもそれを分かりやすく説明して納得させてやれるだけの語彙力はない。
「……本気かい?」
「兄さんの事が信用できないと言うの?」
「気持ちは分かるけど──」
様々な声が飛び交う。
「はん。それで勝てる見込みでもあるのかよ」
「面白い考えですが時間がありませんね」
「順番って言うほど大事なのか?」
説得力だってない。
「何を騒いでやがる」
自動式のドアが開く音にハッと顔を上げたパックマンがゆっくりと振り向いてみればそこにはリドリーが立っていた。彼は確か今回における最後の砦の役目を担っていた筈である。
「今の選出順では勝算が無いという話だ」
セフィロスが説明する。
「リドリー」
信用なんかあるはずもない。
「、……オレと変わってほしい」
「順番を?」
小さく頷いて応える。試合はもう既に自分の番が回ってくるという頃合いで口論しているような余裕もない。嫌な動悸を深呼吸で無理矢理に捩じ伏せてパックマンは進み出る。そうしてリドリーの目の前まで来ると拳を強く握り締めて。
「……お願いします」
敬語なんていつぶりだろう。
「オレは……他の誰かみたいに賢くないし特別強くなければ偉いわけでもないけど。でもこの試合だけは絶対に結果を出してやれるから」
受け売りだとか何とか言われそうだけど。
「信じて」
腰を曲げて頭を下げる。
「……変わって、ください」
訴えかける。
「お願いします……!」