インヴァースの輪舞曲
十回戦、二十回戦と試合を終えていく。不本意にも全国的に配信されているこの試合を見守っている一般市民は此方の気も知らず画面の前で大いに盛り上がってくれていることだろう。
これまでの戦いの中で得た知識や立ち回りに対する理解度が至らない順での選出──それぞれ思う所はあっただろうがそれでも素直に従ってくれたので助かった。それもまた数々の苦しい戦いを有利な盤面へと導いてきた軍師に対する期待と信頼があってこそのものだろう。今はこうして無意味に連敗を重ねているだけのようでも勝ち筋というものは着実にこの目に見えてきている。
「兄さん」
もう何度目かの試合を終えたタイミングで声を掛けてきたのはルフレだった。
「次は」
「分かっているさ」
いよいよ挑む時が来た。来てしまった。
来ないものと踏んでいた程なのに。
「……こんな形では戦いたくなかったな」
小さく呟いたがルフレは返さなかった。
「行こう」
本当。
何でこんなことに。
「パックマンじゃん」
バトルルームを出てすぐ横の壁に寄り掛かりながら携帯端末を弄っていれば見つかった。
「どうも」
「愛想悪すぎ」
へらへらと笑いながら近付いてきて隣に並んだのはカービィである。実際そんな気分でもないというのは嫌というほど伝わっているだろうに──今のバトルルームのあの心臓が押し潰されそうな重苦しい空気を知っているのかコイツ。
「負けたの?」
「パックマンまだですけど」
自分の試合はもう数試合先である。
「お。ラッキー」
カービィは軽薄な笑みを浮かべながら。
「どんな戦い方するか楽しみだったからさ」