インヴァースの輪舞曲
……最善の策。
「ミカゲ」
マークはふと疑問を口にする。
「僕は、ロックのロックバスターを受けた時点で勝負は決まったものとばかり思っていたけど」
ミカゲは振り返る。
「どうして撃墜されなかったんだい?」
「……あれは」
答えようとしたその時だった。
「ベクトル変更」
そう答えたのはあまりにも意外な人物で。
「、カズヤ」
マークは目を丸くして名前を口にした。
「やはり知らなかったようだな」
壁に寄りかかった姿勢で腕を組みながらカズヤはふんと鼻を鳴らす。
「ベクトル変更とは強い攻撃により大きく吹っ飛ばされる瞬間に体の芯に意識を置いて重心を調整しながら体を捻らせ吹っ飛びのベクトル・角度を変更するテクニックの事だ」
マークは顎に手を添える。
「……ミカゲは知っていたかい?」
聞けば本人もこくりと頷いた。
「リュウは」
「いや」
「コイツは駄目だぜ。無意識だからな」
静かに首を横に振るリュウを親指で指してケンが笑うのをジュニアは不思議そうに見上げながら。
「出来るのと出来ないのとじゃ違うのか?」
その瞬間。
水滴が水面を打つような閃きが頭の中に浮かんでマークはハッとする。
「皆。申し訳ないけどここから先は僕が提示した順番の通りにロックに挑んでほしい」
ざわつく声を断ち切るように。
「必ず勝とう!」