インヴァースの輪舞曲
ぎくりと。小さく目を開く。
"WINNER ロックマン"
先程よりも二分も上回るタイムで試合を制するなんて──頭の中でああでもないこうでもないと講じていた策が砂のお城のようにさらさらと崩れていく感覚だった。戻ってきたケンは照れ臭そうに頬を人差し指で掻いて笑っていたがそんな彼に励ましの声をかける輪の中に混ざれない。何も試合結果に怒っているのではない。
前の試合でリュウは接戦していた。であれば同じようにケンも試合展開を有利に運んであわよくばこの戦いに終止符を打ってくれるものだと密かに期待していたのだ。
「ちっとも技が通らなかったぜ」
ケンが笑いながら言うのを聞いてマークは即座に思考を巡らせる。であれば、ロックが前の試合のリュウの動きを見て対策を取ったということか。相変わらず恐ろしいほどの適応力だな……
「次は僕が行くよ」
前に進み出たのはシュルクである。
「私も」
「ううん」
胸に手を置いて申し出るヒカリを断って、
「何処まで通用するか試したいんだ」
その名の通り未来を視ることの出来る力。
「行ってきます」
不用意に足を踏み出せば彼の持つ神剣モナドが未来を伝えて展開を崩す。神の力にも匹敵するその力があの天才を何処まで出し抜けるのか。
「頼んだよ」
パネルへ足を進めるその背に小さく呼びかける。
「……シュルク」