インヴァースの輪舞曲
「惜しかったな、リュウ!」
程なくしてバトルルームに戻ってきたリュウの肩の上にぽんと手を置いたのはケンだった。
「ま。オレが仇を取ってきてやる!」
そう言ってケンは次の挑戦者を待つ戦場へ──その一方でマークは顎に指の背を添えて何やら思考を巡らせていた。ここまでの試合、どれも頑なに攻撃を通さず見切って躱すのが殆どでロックマンのダメージパーセンテージが温まることはなかった。にも関わらずリュウの試合では後一歩というところまで追い詰められている。
それは確かに此方側としても喜ばしいことなのだが流れに乗ることができるかどうかはまた別の話となってくることだろう。であればリュウの試合にこれまでとはどんな違いがあったのか見極めて突き詰めていかないことには。
「リュウ」
マークは声を掛けた。
「試合の中で意識していた事はあるかい?」
リュウは腕を組んで瞼を瞑る。
「……いや」
そっと瞼を開いて、
「ただ、無我夢中だった」
「……そうか。ありがとう」
マークは小さく息をついて長考する。
当然今の回答で情報を得られなかったわけではない。つまりそれは彼が普段から無意識的に戦闘のスタイルとして組み込んでいることであり当然ルルトやハルは普段意識していないということにもなる。……何が違うんだ?
リュウとケンは戦術こそ異なれど基本的な姿勢としては主に拳と蹴り技を主体としており少年時代を共に過ごしてきたとだけあって似通っている。であれば次のケンとの試合で何処まで通るのかが鍵になってくるわけだが──
「、早いな」
誰かの声にマークは顔を上げた。