インヴァースの輪舞曲
「チャンネル登録者数も見込み通りの鰻登りだし投げ銭も馬鹿にならなくて大草原だわ」
マークは眉を顰めた。──彼はともかくとしてナンジャモの方は聞いたことがあるどころではない世間を賑わせている有名人である。そんな彼女と試合の様子を同時に配信しているということはネット上だけに留まらず外側の人間にもこの事態が広まりつつあることだろう。
政府や上層部の目に留まるのも時間の問題。
もし。運良く逃れられたのだとしても試合結果を無かったことにしようとした日には。
「炎上不可避」
イーシスがぽつりと言った。
「イケメンは顔だけでなく頭も良いことで」
「……僕の心の中を」
「筒抜けでーす」
そうか。彼はリオンと同じように心の中を。
「まー心中お察ししときます」
此方の事情を把握したところで彼の態度は今更改まらない様子。ルフレは募る不快感に思わず口を開きかけたがマークがすかさず肩を掴んで。
「こっちのことは諦めてどうぞ」
イーシスは小さく笑み。
「そっち諦めるかどうかは知らないので」
そんなこと。
「兄さん」
マークが弾かれるようにしてその場から離れるとルフレは小さく呼んだ後でイーシスを振り返りべえっと赤い舌を出した。残されたミカゲはちらりとリオンを見て目と目が合えばぎくりと肩を跳ねさせて顔を背けながら咳払い。
「つ、次からは気を付けるように弟殿に」
「欲しいですか」
リオンは目を細めて覗き込みながら口元に笑み。
「何処に何が欲しいんですか」
………………。
「……このメモ帳にお願いします」
「即堕ち二コマとはまさしくこの事だな!」
「オークション流すなよぉ?」
「拙者のお宝グッズに加えさせて頂くで御座る」
オタク。抜かりない。