インヴァースの輪舞曲



たじろぐ。迷いが生じる。──勝てるのか?

「ぼく達が行く」

名乗りを挙げたのはハルだった。

「しずえ」
「はいっ村長!」

モニター画面は一時的に暗転している。

「次は俺たちが」

コウが胸に手を置きながら前に出るもハルは一切視線を寄越さなかった。そうして無言で戦場へと足を進める彼を無理に止める声もなく。

「そこで見ていて」

パネルに足を踏み入れながら。

「負けても」

ハルは続ける。


「その目で見たものを絶対に次に繋いで」


敗北の屍を踏み越えたその先へ。


「兄さん」
「うん」


呆気に取られている場合じゃない。

勝ち筋を見抜くんだ!


「、っ」

そんな緊張の空気を掻っ攫うようにして端末の通知音が厭に大きく響いた。こんな大事な時に誰がマナーモードにしていないものかと思えば。

「……すまぬ」

端末を懐から取り出したのはミカゲである。忍び装束を纏っている間は幾らか冷静でいてくれる点は有り難いが抜け目がないわけでもないというのはある種の欠点だ。とはいえ彼らしい一面にそれとなく場の空気は和んだわけだが……

「電源くらい切っておけよ」

パックマンが念のため釘を刺す。

「大事な時なんだから」
 
 
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