インヴァースの輪舞曲
まさかこんな形で。こんな気持ちで。
戦場に立つことになるなんて思いもしなかった。
「くっ」
試合開始の合図と同時に駆け出す。きっと今のこの人にどんな言葉を投げ掛けたところで無駄だということは端から分かりきってきた。だからこそ言葉は要らない──目前にまで迫ったその人に電気を纏いながら突進を仕掛けたけれど予測通り振るった拳は受けて流された。右下に体勢を崩されるもすかさず地面を踏んで切り返して頬に青の閃光を跳ねながら足払いにかかる。
「、!」
──読まれた! ルルトの足は空を切る。影が差してそちらを見るより早く頭上のロックマンの腕を振るった側から発生した斬撃がルルトを襲う。
「つ……ッ!」
実戦であれば一溜まりもない。そんな一撃を迷いなく打ち込むことができるのは彼の誇る強さとも言うべきだけれど──状況が状況だけに。いくら相手が自分を取り戻す為に戦っていると知っていたとしてもその信念は揺るぎない。であれば。
「……はああっ!」
投げ出された空中で体を捻らせ脚に電撃を纏いながら踵落とし──同時に気迫の声を上げたがそれも地上で待ち構える彼には通じず両腕を交差させて難なく防がれた。視線を上げたロックマンは冷たく冷静に双眸の青で標的を捉えて攻撃の後隙で直ぐには反応出来ずにいるルルトの鳩尾目掛けて拳を貫くが如く突き上げる。
「かッ!?」
目を開いて怯んだルルトの脚を掴んでロックマンは力強く振り回すと空中に投げ出した。宙を舞う体をすかさず追いかけて目前、装甲を纏った腕は赤々と熱を帯びてそのまま振るえば炎を発生させながらルルトの体を容赦なく殴り付ける。ステージ外に投げ出されたルルトは咳き込んで眉を顰めながら体全体、その表面に青の閃光を走らせるとまずは復帰を優先した。それを見込んでかロックマンは深追いせずステージ上で、……!
しまった!
「ぁ」
電光石火の如く身のこなしでステージの中央へ舞い戻ることは許されど目前には。彼の構えた腕のその砲口の奥から青白い光が膨張して瞬く間に。
世界が眩む。
光に呑み込まれる──