インヴァースの輪舞曲



そうして迎えた、正午過ぎ。バトルルームは参加する者と観戦する者とで賑わっていた。

ただの一言も隊員の誰とも言葉を交わすことなく吸い込まれるように足を進めたロックマンは青いパネルに足を踏み入れた途端白く淡い光に包まれてその先の戦場へと姿を消してしまう。注目の一手を誰が飾るのか観戦者側のX部隊の面々はキョロキョロと忙しなく辺りを見回したが終始無言で足を進めた存在に気付かない。


程なく。

モニター画面に映し出される。


「……少しは。驚いてくれたかしら」


戦場に降り立ったのは。

黄金色の髪を二つ結びにした少女──ルルト。


「、ルルト」

モニター画面に注目していたルーティは思わず声に出して言った。彼女といえば良い意味でも悪い意味でも強気に声を張り上げて勇ましく立ち向かう印象があったものだが──そんな見た目にも性質的にも強情な彼女が一番手を飾るなんて。

「ルルトさんは何より速いです」

ブルーが隣に並んで解説する。

「小柄に見えて普段から鍛えているので見た目以上のパワーもあります」

ルーティは語るブルーに目を奪われていたがもう一度モニター画面に注目を戻して。

「……でも」
「勝てるとは思っていないと話していました」

ブルーは続ける。

「けれど。本気で隊長と戦ってみたいのだと」

ごくりと息を呑む。

「簡単に負けるつもりはありませんよ」

カウントダウンが始まる。緊張を手招くように誰の目にもモニター画面の中の数字がスローモーションで刻まれる最中ブルーは言葉を紡いだ。

「彼女だって──戦士です」


そして。

戦いの幕は切って落とされる──
 
 
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