インヴァースの輪舞曲
……想像していた以上だった。次々と名乗りを上げる隊員の中にはプライドだってあっただろうにまさかそれを投げ打ってまで前半戦に出るのだと自ら進んで立候補してくれるものだとは──ほんの少し呆気に取られていたマークの肩の上に静かに手を置いたのはクロムだった。彼の隣にはルキナの姿も。恐らく二人チームを組んでロックマンとの戦いに挑むつもりなのだろう。
「任せたぞ」
「私たちが道を切り開きます」
皆が理解してくれている。
この戦いは決して一筋縄ではいかない。
「……ああ!」
マークは深く頷いた。……大丈夫。
必ず、この戦いに勝利して取り戻してみせる!
場面は変わってバトルルーム。
「ロックマン」
食堂で話は聞いていた。他三人と屋敷の中を散策しているものかと思ったがそれとなく訪れたその場所に一人で居るものとは──ルーティは彼の背中を見つけて思わず呼びかける。
「……君か」
振り向いた彼は何処か安心した様子だった。
「大丈夫?」
ルーティが隣に並びつつ顔を覗き込むようにして訊ねるとロックマンは案の定といったところか苦笑いにも似た笑みを浮かべた。まさか彼だって所謂家庭の事情でここまで大事になるものとは思わなかったことだろう。
「不安?」
「……それは意地悪な質問だな」
彼なりに戯けたつもりだったのだろうが、笑えるはずもなかった。そっか、と呟いて。
「……ロックマンは」
訊ねる。
「本気で戦うんだよね」