インヴァースの輪舞曲
視線を向けられたロックマンは小さく肩を跳ねて目を逸らした。普段の彼ならそのよく回る舌でどれだけ不利な状況だろうと上手く丸め込んでくれたことだろうが今回ばかりは戦力として数えられない。寧ろこの話し合いに参加させようものなら反論できないどころか相手の肩を持つだけに終わってしまう可能性すらある。
「君たちの意見も聞かせてほしい」
マークは付き添いの二人に質問を投げ掛ける。
「あたしはロックが決めたことなら」
ロールはそこまで言ったがライト博士の視線を感じたのかびくりと体を跳ねさせるとあたふた慌てふためいた後に肩を竦めて苦笑い。
「で、でもやっぱりロックも一緒がいいな!」
この子も駄目そうだ。……となれば。
「そうだな」
ブルースは腕を組み足を組み替えると。
「俺は正直な話この件に関しちゃ興味がない」
……彼も駄目か。
「が」
そう思ったのも束の間。
「アイツが抜けたら部隊は解散するのか?」
思わぬ質問が飛んできた。
「詳しいことまでは決まっていない」
ルフレの視線を受けてマークが代わりに答える。
「ただ、今回の話を聞いて各隊員の士気が落ちているのは事実だよ。他の誰かが枠に嵌ろうとしたところで部隊の存続は正直危うい」
「成る程な」
……何だ? 何を考えている?
「アンタらの言い分が確かならロックマンは優秀且つ最強ってワケだ。戦いたいかそうじゃないかの意思は抜きにしろ大した話だよ。そんなヒーローが研究所に戻ってきてくれるってならこっちとしても安心材料になる」
くくっと喉を鳴らして嗤う。
「だが──そういう意味ならそっちも条件は同じものと見た。世間に広く知れ渡る優秀な部隊を纏め上げる隊長だ。アンタらだけじゃない国だって簡単に手放したくないことだろう」
ブルースは組んでいた腕を足を解いて。
「取引をしようじゃないか。アンタら部隊の隊員総出でうちのロックマンを一度でも倒すことが出来たら──ここに残ることを認める」
周囲が僅かにざわつくのが肌に感じ取れた。
「……ただし」
ブルースは続ける。
「全員が全員返り討ちに遭ったらその時は」
ひと呼吸置いてハッキリと。
「アンタらの部隊を解散させろ」